実施報告

開催日: 2023年6月28日

第32回 納富信留先生 原子論の哲学的起源 ―古代ギリシア哲学における存在と生成変化―

投稿日:2023.03.13 カテゴリー:実施報告

【概要】
古代ギリシアでは紀元前6世紀から「哲学(フィロソフィアー)」と呼ばれる新たな知の試みが始まり、西洋で展開される自然科学の出発点になりました。現代では相対性理論や量子力学によって過去のものとみなされる近代科学や、その中心にあった原子論も、もとは古代ギリシアで提示されたさまざまな問題とそれを解決するプロジェクトの上に成立したものです。原子論は、前5世紀にレウキッポスとデモクリトスという自然学者が提唱した哲学で、前3世紀にエピクロスが理論的に完成させました。古代原子論が一体どのような哲学的背景で成立し、どのような理論だったのかを、同時代のプラトンらとの関係で検討します。単に歴史的な興味だけでなく、現代の科学を捉え直すためのヒントになれば幸いです。

【ご略歴】
東京大学人文社会系研究科教授。2023年4月より東京大学文学部長。
東京大学文学部卒業、同大学院人文科学研究科哲学専攻修士課程修了。英国ケンブリッジ大学古典学部博士課程修了(Ph.D.)
九州大学助教授、慶應義塾大学文学部准教授、同教授を経て、2016年4月1日より現職。国際プラトン学会元会長(2007~2010年)、日本哲学会理事、日本西洋古典学会常任委員、日本学術会議連携会員など。
専門は、西洋古代哲学、西洋古典学。古代ギリシアにおける「哲学(フィロソフィア)」の成立を焦点に、詩と哲学、ソフィスト、弁論術、ソクラテス、プラトン、アリストテレスなどを主なテーマとしている。また、ギリシア哲学の近代日本やアジアでの受容も研究している。
主な著書に、The Unity of Plato’s Sophist: Between the Sophist and the Philosopher (Cambridge University Press, 1999:邦訳、『ソフィストと哲学者の間』、名古屋大学出版会、2002年)、『ソフィストとは誰か?』(人文書院、2006年、サントリー学芸賞;ちくま学芸文庫、2015年)、『ギリシア哲学史』(筑摩書房、2021年、和辻哲郎文化賞)など。