【概要】
物理学における基本法則が全て可逆的決定論的方程式で書かれているにもかかわらず、我々の世界は不可逆的確率論的に出来上がっている。講演者は、この一見矛盾した問題に散逸構造の理論でノーベル化学賞を受賞したイリヤ・プリゴジン教授と共に長年取り組んできた。この問題の裏には物理学における時間の概念に対して、力学的時間と熱力学的時間という異なった時間の概念が存在していることに絡んでいる。この力学的時間は実はユダヤ・キリスト教的一神教的世界における時間の概念の具現化であり、熱力学的時間は日本人に馴染んだ多神教的時間の概念の具現化である。この講演では、「存在」を語る力学的時間と「変化」を語る熱力学的時間について掘り下げて論じることにする。講演は日本語で行われる。
【ご略歴】
1979年東京理科大学院物理学研究科で学位を取得
1980年よりテキサス大学とベルギー自由大学物理および化学国際ソルベー研究所の教授でノーベル化学賞を受賞されたイリヤ・プリゴジン教授に25年以上にわたって師事。現在、University of Texas at Austin の複雑量子系研究センターのSenior Research Scientist、および、東京大学生産技術研究所の研究顧問。
活動歴:ベルギーのソルベー研究所のScientific Adviser、東京大学生産研究所特任教授、京都大学基礎科物理学研究所客員教授、核融合科学研究所客員教授、大阪府立大学大学院客員教授などを歴任。
専門は、非平衡統計物理学、時間の向きの対称性の破れ、複雑系、カオス、量子論及び古典力学の基礎論、ナノ物性、天体力学と多岐にわたる。
受賞歴:量子力学の構築で歴史的に有名な「物理および化学ソルベー国際会議」の100周年特別記念賞、ロシア科学アカデミーから「ピョートル大帝金賞」、ベルギー王立科学・文学・芸術アカデミーから「ヴァン・デル・リンデン賞」を受賞。ヨーロッパ芸術・科学・人文学アカデミー正会員。