【概要】
「文化」と「工学」,両者のつながりを再生するのはヴァーナキュラー(Vernacular)という概念であり,それを 具体化するのは社会システム・デザインだと考えられる.本稿では現代の代表的な消費者商品である住宅と自動車 を対象に検討する.ヴァーナキュラーの典型である住宅は世界共通の工学製品として見做された.しかし今日,住宅 は土地固有の性格を反映した,ヴァーナキュラーな(土地に根差した)ものに帰っている.日常的に使われる住宅には気候風土とそれに由来する文化と人々の育んできた心情,美意識が自然と反映される.一方の自動車も近現代の工業製品の典型だが,やがてヴァーナキュラーな製品として見做されるようになるだろう.ガソリン車 から EV へという発想自体が時代遅れになり,EVだけでなく多様な駆動系とその他の操舵系、制御系との組み合わせPeople modal systemの出現で地域の持つ 風土,文化に沿った幅広い選択肢を選びながらデザインされるであろう.
【ご略歴】
東京大学工学部建築学科工学士 (1966)、ハーバード大学大学院都市デザイン修士 (1972)、マサチューセッツ工科大学経営大学院修士 (1975)
前川國男建築設計事務所等で設計に従事後,1975年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。87年ディレクター,89年から94年まで東京支社長。2002年退職。その後,独立行政法人経済産業研究所(上席研究員),産業再生機構(非常勤監査役),東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員(2012年)を歴任。東大EMPを2008年に立ち上げ2019年まで企画・推進責任者(2016~2018特任教授)。オリックス、SMFG他、数社の社外取締役を歴任。
現在、イグレックSSDI代表、HBMS (Hiroshima Business and Management School)県立広島大学経営研究科科長、ひろしまイノベーション推進機構投資スーパーバイザー、東京大学生産技術研究所特別研究顧問、エアウィーヴおよびMTI社外取締役、築地本願寺評議員を兼務。
主な著書に『組織』、『社会システム・デザイン-組み立て思考のアプローチ』、『東大エグゼグティブ・マネジメント デザインする思考力』『東大エグゼグティブ・マネジメント 課題設定の思考力』(2冊とも共著,東京大学出版会),『循環思考』(東洋経済新報社),『アメリカと比べない日本』(ファーストプレス),『「豊なる衰退」と日本の戦略』(ダイヤモンド社),『マッキンゼー合従連衡戦略』(共著,東洋経済新報社),『成長創出革命』(ダイヤモンド社),『コーポレートアーキテクチャー』(共著,ダイヤモンド社),『企業変身願望-Corporate Metamorphosis Design』(NTT出版)。その他,企業戦略,組織デザイン,リスク・マネジメント,戦略的提携,企業変革,社会システム・デザインに関する小論文・記事多数。