講師:岡田暁生先生(京都大学人文科学研究所教授)
【 講師略歴 】
1960年京都生まれ。大阪大学文学部博士課程単位取得退学。ミュンヘン大学およびフライブルク大学で音楽学を学ぶ。現在京都大学人文科学研究所教授。文学博士。著書『音楽の聴き方』(中公新書、2009年、吉田秀和賞受賞、2009年度新書大賞第三位)、『ピアニストになりたい - 19世紀 もう一つの音楽史』(春秋社、2008年、芸術選奨新人賞)、『恋愛哲学者モーツァルト』(新潮選書、2008年)、『西洋音楽史 - クラシックの黄昏』(中公新書、2005年/韓国版:2009年/中国版:2016・19年)、『オペラの運命』(中公新書、2001年、サントリー学芸賞受賞)、『すごいジャズには理由がある』(アルテス、2016年)など。『スコラ 坂本龍一 音楽の学校』(NHK)や『名曲探偵アマデウス』(NHK・BS)など、テレビ出演多数。コロナ禍を受け執筆された『音楽の危機』(中公新書)が小林秀雄賞を受賞。
【概要 】
いうまでもなくロシアは大作曲家/大演奏家の一大産地です。チャイコフスキーやラフマニノフのいないクラシック音楽レパートリーは考えられず、また彼の地からは次々に大ピアニストや大ヴァイオリニストが輩出されてきました。しかしロシア音楽にはどこか西洋クラシックとは本質的に異質なものがあります。西洋クラシックはつまるところドイツ・フランス・イタリアを中心としており、これはEU/キリスト教文化圏にすっぽりと重なります。それは「人間性」や「公共性」や「友愛」や「合理主義」といった西洋近代の理念の鳴り響くシンボルでありつづけてきました。それに対してロシア音楽は、まさにその真逆のものによってこそ、わたしたちを魅了してきたのかもしれません。このあたりを「交響曲=公共曲」「バレエ=人形」「鐘」「アメリカ・ポップス」をキーワードに考えてみたいと思います。