実施報告

開催日: 2022年1月11日

第23回 「原発システム」の検証から考える社会システムデザイン

投稿日:2021.12.24 カテゴリー:実施報告

【第23回】
原発システム」の検証から考える社会システムデザイン
2022111日(火)1900オンライン開催

【講師】
横山 禎徳(よこやま よしのり)氏

横山禎徳氏ご略歴】
社会システムズ・アーキテクト
HBMS (Hiroshima Business and Management School)県立広島大学経営研究科科長
東京大学工学部建築学科工学士 (1966) ハーバード大学大学院都市デザイン修士 (1972) マサチューセッツ工科大学経営大学院修士 (1975)
前川國男建築設計事務所等で設計に従事後、1975年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。87年ディレクター、89年から94年まで東京支社長、2002年退職。その後、独立行政法人経済産業研究所(上席研究員)、産業再生機構(非常勤監査役)、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員2012年)を歴任。東大EMPを2008年に立ち上げ2019年まで企画・推進責任者(2016~2018年特任教授)。エアウィーヴ(現任)他、数社の社外取締役を歴任。現在、イグレックSSDI代表、ひろしまイノベーション推進機構投資スーパーバイザー、東京大学総長室アドバイザー、築地本願寺評議員を兼務。

概要
原発の是非を議論する多くの人々は複雑かつ高度な技術である原発を十分理解して議論を進めているという自信があるのだろうか。実際、国会事故調の際インタビューした中に原発を多面的、総合的に理解しているという印象を与えてくれた人は極めて少ない。
自然科学だけではなく、社会科学、それに行動科学、その他の諸科学が含まれるし、それらの科学に基づいた工学の分野も高度で幅広い。それを統合して捉え、今後、事故をゼロにできるのか、あるいは「想定外」というべき予期せぬ事態が起こりうるのか、その場合、どう対処するのかに関して議論が定まっていない。そのような状況に一般市民である我々はどう対処することができるのだろうか。この課題に対する答えにより近づくために、ここでTRANS-SCIENCE と「社会システム」という概念を活用することを提案する。
TRANS-SCIENCEとは「科学が問いを発することはできるが、科学だけで答えてはいけない分野」のことである。また、「社会システム」とは社会学者の定義とは異なり、デザインを生業とする筆者の定義は「エンドユーザーへの価値創造と提供の仕組み」である。それはエンジニアリング・システムというハードウェア思考ではなくソフトウェア中心の思考である。そして、重要なことは、そのシステムはデザイン可能であることだ。
原発の事故防護に関して「五層の壁」と「五層防護」の違いを理解している一般市民はどれだけいるだろうか。前者はハードウェア発想であり、後者はソフトウェア発想である。前者は失敗したのであり、その経験を十分生かしたソフトウェア発想が必要だ。それを実践するのが「社会システム・デザイン」なのである。